「十字軍物語1@塩野七生」を読みました
塩野七生さんの「十字軍物語1」を読みました。前作「ローマ亡き後の地中海世界」で中世における北アフリカイスラム世界と南ヨーロッパキリスト教世界の海での対決を描いたのに対して、今作では中東イスラム世界と西ヨーロッパキリスト教世界の陸での対決が描かれています。
第1巻では、ローマ法王と神聖ローマ帝国皇帝の対立、カノッサの屈辱から始まり、法王の権威強化としての十字軍提唱、そして実際の十字軍遠征が書かれてあります。中世のこの時代、中央集権国家ではなかったため国王や皇帝と同じくらい諸侯が力を持っており、、第1次十字軍もドイツ、フランス、イタリアの3諸侯が中心となって行われました。
十字軍は聖地奪還の宗教的情熱から始まったのに対して、イスラム世界ではこの段階では宗教戦争という考えはなく、基本的には領土侵略ととらえていたようです。中央集権ではなく群雄割拠の中世らしい体制で、挙げ句の果てには十字軍・イスラム連合軍VS十字軍・イスラム連合軍なんて戦闘も起こったそうで意外でした。
ちょっと辟易したのが十字軍が街を攻略した後そこにいるのはイスラム教徒だと決めつけて虐殺を繰り返したところ。現代の感覚で昔の出来事を論じてはいけないとは思いますが、宗教的熱狂というのは怖いなあと思いました。
本作でイスラエル王国建国まで至りました。十字軍と言えばリチャード獅子心王とサラディン、ってくらいしか知らず、登場人物すべて初耳の人ばかりでしたが、なかなか魅力的な人物も多くおもしろかったです。
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